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桐たんす、和家具からテーブル、机までお造りする職人です。また漆塗りの職人でもあります/指物師、漆塗師~京都の大東漆木工

布目塗り、一閑塗り、法隆寺

 今日は、布目塗りや一閑塗りといって、布や和紙を貼って、その凹凸を生かした漆塗りの話をしてみたいと思います。

 内容的には、職人は、西岡棟梁が言っておられたように、奥深く、大らかに考えなければならぬのではないかといったお話です。


 こんな布や和紙を着せて漆を塗ります

 布を着せて、布目を生かした漆の塗り方を、布目塗りと呼びます。

 和紙を貼って、その風合いを生かした漆の塗り方を、一閑塗りとか、一閑張りとか言います。


漆、布目塗りの小引き出し

 布目塗りです。

 小引き出しの小さな箪笥です。


漆、布目塗り再生

 元々は、古い小引き出しの箪笥です。
 
 引き出しの前側だけ新しく布を貼って、漆を塗り直しました。

 本体の方は、古いままで、元々の布目塗りを生かしました。

 
漆、布目塗りの違い

 塗り方や、使った布や、漆の色によって、雰囲気が変わります。


漆、布目塗りの小たんすの引き出し

 引出しを開けたところです。

 引出しの内側は、桐を使っています。
 

凸凹のある布を着せて、漆を塗る

 この布目塗りの小たんすの引出し前板には、こんな凸凹のある布を着せて、漆を塗りました。

 布目塗りの工程を簡単に紹介しますと…
 

米糊と、生漆を混ぜて糊漆を作る

 米の粉を煮て作った、いわゆるデンプン糊と、生漆を混ぜたもので、布を貼り付けます。


糊漆

 よく混ぜて、練り合わせて使います。

 これを糊漆と言ったりします


糊漆で、布を着せる

 糊漆で、布を着せたところです。

 乾くと、糊漆は、こんな風に真っ黒です


IMG_0038.jpg

 さらに、生漆を浸み込ませて、かっちりと布を固めます。


砥粉を水で練った泥と、生漆を混ぜて、漆の下地を作る

 その上に、薄く、漆の下地を付けます。

 漆の下地は、砥粉という細かい土の粉を水で練った泥と、生漆を混ぜて作ります。


漆錆

 よく練り合わせて使います。

 この漆の下地を、錆とか、漆サビとか呼んだりします。


黒漆で下塗り

 漆の下地も乾くと真っ黒です。

 下地が乾いたら、軽く研いで、黒漆で下塗りをします。


朱の顔料と漆を混ぜて朱漆を作る

 黒漆の下塗りが乾いたら、また、軽く研いで、朱漆で中塗りをします。

 朱漆は、朱の顔料と漆をよく練って混ぜて作ります。


朱漆を塗る

 こんな感じで、朱漆を塗りつけます。


朱漆が乾く

 乾くと、こんな感じです。

 ちょっと、赤い色が、冷めると言いますか、濁った感じになります。

 これは、漆の色が出るからです。


引き出しが、本体に収まるか確認

 引き出しが、本体に収まるか、確かめてみます。


漆を研ぐ

 引き出しの収まり具合を見ながら、研ぎます。

 今度は、よく研いで、下に塗った黒を研ぎ出します。



漆の研ぎ炭

 漆を研ぐのは、こんな炭を使います。

 シャカシャカと、研げます。


漆をこす
 
 研げたら、上塗りをします。
 
 上塗りには、透明の漆を使います。漆は、透明でも、こんなコーヒー色です。

 何回か濾して、ゴミを取ってから使います。


 
上塗りの漆が、乾く

 上塗りが、乾いたところです。

 漆は、乾くと少し透明感が出ます。


金具を付ける

 金具を付けます。


研ぎだした黒漆"

 黒い色の部分が、研ぎだしたところです。


本体と引き出しと、2種類の布目塗り

 本体と引き出しと、2種類の布目塗りです。


竹のザルに和紙を貼って漆を塗った一閑塗り

 こちらは、和紙を貼って漆を塗った一閑塗りです。

 竹のザルに和紙を貼り付けて、漆を塗りました。


竹ザル、漆、一閑塗りの裏側

 裏側です。

 裏側は、朱の上に透明の漆を塗り重ねました。


こんな和紙を、糊漆で、貼り付けます

 こんな和紙を、糊漆で、貼り付けて、漆を塗ります


和紙は、手でちぎって糊漆で貼り付けます

 和紙は、手でちぎってぺたぺたと貼り付けます。

 手でちぎって貼り合わせますと、和紙の繊維が絡み合って強くなります。



漆、一閑塗り、和紙と竹の風合い

 和紙と竹の風合いが、なんとなく出でいるような、もう少し出ていても良いような気もします。

 和紙や布など、素材のデコボコ感を生かして、漆を塗るというのは、大変おおらかな発想です。

 ただ、私ども、職人にとっては、大変難しいことです。



小ザル、漆、一閑塗り

 普通、職人は、平らに、均一に仕上げることに慣れているからです。

 鉋がけでも、なるべく平らにツルンと削って仕上げて喜んでしまいます。

 職人は、チョット曲がった木でも、自分なりの勝手な規準に合わせて、真っ直ぐに削って使ってしまいます。


 私共、職人は、もっと、大らかに考え方を変えなければいけません。


雨に打たせて乾かした桐材

 長いこと、ワザワザ、雨に打たせて乾かした桐材です。

 桐材屋さんに、

 「仕事に合わせて木を買うたらあかん。

 木に合わせて仕事をしたらええんや。
 
 木は、自然のもやから大らかに考えんと仕方ないやろ 。」


と言われたことがあります。

 ホントにその通りです。



桐材、芯の部分

 そう言うと、法隆寺の西岡棟梁も、確か、

 「人間の都合で、勝手に作った規準に合わせて考えて、作業しようとするからおかしなことになる。

 木や自然に合わせて仕事をせなあかん。」

 というようなことを仰られていたのを思い出します。
 

 
桐材、1丸太分

 福井県の越前に、一寸知り合いの桐たんすの職人さんの兄弟がおられます。

 自から、生えている桐の木を買って、それを切り倒して、さらに乾かして、桐たんすを造っておられます。

 法隆寺や薬師寺と同じやり方です。

 

 なんとなく、大らかで、奥深い感じのする方々です。

 私も、少しでも、あやかれるようにと、職人の末席を汚しております。


 
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2013-07-04 : 漆塗り : コメント : 4 :
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非公開コメント

No title
たんすを作るだけでも大変なのに、漆塗りでしあげるのはずい分と手間がかかっているのですね。
何気なく見ていた斑模様も下地あってこそなのですね。
塗りの箸でもそのような模様がありますが、同じように研ぎ出していたとはしりませんでした。
和紙を貼ったざるも渋くてなかなかいいですよ。
2013-07-06 06:08 : kaz URL : 編集
Re: No title

 漆塗りの種類は、数え切れないほど大変多くあります。

 私などは、そんな技法の一部だけを知っているに過ぎません。

 漆塗りに限らず、特に私共、職人は、世の中のほんの一部しか知りません。

 世間は、私などが考える以上に、本当に奥が深く、奥深い方々もたくさんいるなあと感じる昨今です。


2013-07-07 08:21 :  大東 URL : 編集
No title
見事なもんですね・・毎回、楽しく作品を見てます。
漆工芸は特に、娘が香川漆芸研究所で勉強していただけに
興味を持っています。
2013-07-08 20:35 : ポンポコおじさん URL : 編集
Re: No title

 娘様は、香川漆芸研究所という環境の良い所で、貴重な時間と体験を持たれ、色んな技を学ばれたことと存じます。

 私の漆塗りや、木工の技術は、浅はかで拙く、恥ずかしい限りです。

 ブログの更新のペースも遅く、文章、画像とも、お見苦しいことと存じますが、我慢してご覧戴ければ幸いです。
2013-07-09 05:03 :  大東 URL : 編集
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プロフィール

 大東伸哉・おおひがしのぶや

Author: 大東伸哉・おおひがしのぶや
 京都で、 木工指物(指物師)と、
 漆塗り(塗師)をやっております。

 「京指物」 伝統工芸士
 大東漆木工 代表

 桐たんすや、水屋箪笥、机等、無垢の木で、和家具を造って…、漆をはじめ、天然の素材で、昔ながらのやり方で、仕上げております。
 
 桐箪笥や和家具の洗い修理、再生(リフォーム)や、漆の塗り直し等もしています。

 http://www.wakagu-ohigashi.com/

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