桐たんすと湿度、滋賀 京都

去年の暮れに、滋賀県草津市のお宅に納めた桐たんすです。
3月の初め、桐たんすの引出しの開け閉めがしにくくなったと、お客様から、ご連絡をもらいましので、その調整にお宅に伺いました。
原因は、滋賀県と京都の気候、湿度の違いによるものでした。

実は、「京都で造った桐たんすを滋賀県、近江地方に持っていくと引き出しが開かんようになる。」と昔から言われておりました。
ですので、少しゆるめに引出しを調整して仕込んだのですが、やはり、かなりきつくなっておりました。
引出しの上端を約0.1mm~0.15mm(ノート用紙やコピー用紙1枚分~名刺1枚分)位削りますと、また、機嫌よく出し入れできるようになりました。

京都の湿度は、都道府県別の年平均湿度の統計では、年にもよりますが、約65%で大阪、東京とともに低い順から5番目以内です。他に、山梨、群馬県など、内陸の地方が、湿度が低いようです。
お隣の滋賀、福井県の年平均湿度は共に、約75%と京都より1割程度高く、都道府県別統計では、高い順から5番目以内です。

他に、富山を筆頭に、山形、青森県など日本海側の地方が、湿度が高いようです。
富山は、北アルプス剱岳や立山連峰の影響が大きいようです。
そして、夏場は、京都、大阪も湿度がかなり高いので、この違いは、ほとんど冬場の気候の違いによるもののようです。

冬に乾燥注意報がでる所と、大雪、雪崩など、雪に関する注意報、警報がでる所の違いと考えて良いようです。
滋賀県は琵琶湖の影響で、冬でも、夏でも、湖北、湖南地方共、湿度が高いようです。
桐たんすを造る時、夏場はよいのですが、冬場は、こういったことをよくよく考えなければなりません。
年平均で、湿度が1割程度違うということは、冬場の湿度の違いは、その2~3倍程度にもなります。

冬場、京都、大阪など湿度の低い所で造った桐たんすを、滋賀、福井など、湿度の高い所に納める場合には、引出しが開かないといった不具合が生じることがあります。
ただ、引き出しを少し削って調整しなおす程度で済みます。
反対に冬に滋賀、福井など、湿度の高い所で造った桐たんすを、京都、大阪など、冬に乾燥する所に納める時は、気をつけないと、引き出しの納まりが、スカスカになったり、ひどい場合は、割れが、入ったりすることがありますので、厄介です。

桐たんすを冬の季節に注文されたり、購入されたりするときは、この事にちょっと気をつけられたほうが良いかもしれません。
桐たんすは、微妙に自然の影響を受けています。
地元の業者を利用されるか、冬の時期を避けて、注文された方が良いかもしれません。

ところで、調整しなおした桐たんすには、ちょっと洒落た布が掛けられていました。
お聞きしましたら、着物の帯だそうです。
粋というか、お洒落に着物とウチの桐たんすを使っていただいて、ちょっと嬉しく思いました。
帯を掛けて、ちょっと小粋に使う滋賀、近江草津の桐たんすです。
お問い合わせは、こちらです。
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職人気質の影で、鉋調整
今日は鉋についての話を少ししてみたいと思います。
簡単に言いますと、鉋は、手入れしなければ上手く削れません。
そして、鉋の手入れには、ちょっと手間がかかるという内容です。

カンナの刃は、刃先がきっちりと砥石にあたってよく研げるように、刃の裏側を裏すきといってすいてあります。
繰り返し何度も鉋の刃を研いでいるうちに、このように、裏切れといって、刃先の裏が砥石に掛からなくなってしまいます。

それで、鉋の刃を、反対の表側から叩いて、刃の裏側を、押し出します。

こんな風に、ぎっしりと、鉋の刃に叩いた跡がつくまで叩きます。
気長に、コンコンと、何回も、おそらくは、千回は超えると思いますが叩きます。

そうして、鉋刃の裏を研ぎますと、刃先だけスーと砥石が掛かって、このように、研ぎ上げることが出来ます。

別の鉋の刃ですが、同じように叩きだして研ぎました。
このように、鉋刃の裏を叩き出して研ぎ上げた形を糸裏と呼び、鉋の刃は、大変よく切れる状態です。

きっちりと研いだカンナの刃は、ホントに良く切れます。刃先に触れるだけで、ばっさりと何の抵抗もなく、切れます。
自分の指先を切っても傷みも感じません。いつの間にか血が出ていて、気付かされることもしばしばです。

鉋の刃を研いで短くなった分、鉋台の仕込みの堅さも少しきつくなりますので、鑿でちょっとさらえて、微妙にゆるめて調整をします。
鉋刃の仕込が堅いと、鉋台から刃先を少し出したときに、鉋台が微妙に反って狂うからです。

鉋台の下端も使っているうちに磨り減ったりして、少しずつ狂ってきますので、台直し鉋という特殊な鉋で、横摺りして削って平らになるように調整します。

これは、長台カンナと言って、正確にまっすぐに削るための鉋です。
今回は、この3台の鉋を調整しました。いつも2台~4台位の鉋をセットで使っていますので、調整の時期も重なってしまうことが多く、大変です。

他にも、このような色々なかんなを調整しました。

そこそこ手間をかけ、調整しますと、鉋は、機嫌よく削れます。
ホントのことを言いますとカンナの調整には、結構時間が掛かります。
特に何台かまとめてこれだけの数の鉋を調整するとなると、ホントにかなりの手間と時間が掛かります。

でも、私を含めて職人は、鉋の調整に時間が掛かったとか、手間を食ったとかは、あまり口にはしません。
職人にとって、時間や、手間がかかると言うのは、腕が悪いと自分で言っているようで、カッコ悪くて恥ずかしからです。

職人は、きちんと、きっちりと、正確に、それでいて、早く出来てこそ、腕がよくて、お金がもらえるのです。
ですから、職人の「朝飯前のひと仕事」は、実は、暗いうちからであったりします。

おそらく大抵の職人は、ホントは、仕事で、四苦八苦し、予想以上に手間取る時が、案外多いのではないかと思います。
そんな時に限って、職人は、素知らぬ顔でトボケているものです。
特に、お客様の前では「大したことないです。」とか「それほどでもなかったですよ。」とか言って、適当にカッコをつけて、取り繕ってしまうことが多いものです。

ただ、お客様の方で、なんとなく察してしまわれるといいますか、お察し下されることも、私共、職人が考える以上に多いように思います。
職人は、単純で困ります。

職人の「大したことないです。それほどでもないです。」は、実は、ホントは「大したことある。」事が多いので厄介です。
職人気質の影で、職人の嫁は、泣いております。
簡単に言いますと、鉋は、手入れしなければ上手く削れません。
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カンナの刃は、刃先がきっちりと砥石にあたってよく研げるように、刃の裏側を裏すきといってすいてあります。
繰り返し何度も鉋の刃を研いでいるうちに、このように、裏切れといって、刃先の裏が砥石に掛からなくなってしまいます。

それで、鉋の刃を、反対の表側から叩いて、刃の裏側を、押し出します。

こんな風に、ぎっしりと、鉋の刃に叩いた跡がつくまで叩きます。
気長に、コンコンと、何回も、おそらくは、千回は超えると思いますが叩きます。

そうして、鉋刃の裏を研ぎますと、刃先だけスーと砥石が掛かって、このように、研ぎ上げることが出来ます。

別の鉋の刃ですが、同じように叩きだして研ぎました。
このように、鉋刃の裏を叩き出して研ぎ上げた形を糸裏と呼び、鉋の刃は、大変よく切れる状態です。

きっちりと研いだカンナの刃は、ホントに良く切れます。刃先に触れるだけで、ばっさりと何の抵抗もなく、切れます。
自分の指先を切っても傷みも感じません。いつの間にか血が出ていて、気付かされることもしばしばです。

鉋の刃を研いで短くなった分、鉋台の仕込みの堅さも少しきつくなりますので、鑿でちょっとさらえて、微妙にゆるめて調整をします。
鉋刃の仕込が堅いと、鉋台から刃先を少し出したときに、鉋台が微妙に反って狂うからです。

鉋台の下端も使っているうちに磨り減ったりして、少しずつ狂ってきますので、台直し鉋という特殊な鉋で、横摺りして削って平らになるように調整します。

これは、長台カンナと言って、正確にまっすぐに削るための鉋です。
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他にも、このような色々なかんなを調整しました。

そこそこ手間をかけ、調整しますと、鉋は、機嫌よく削れます。
ホントのことを言いますとカンナの調整には、結構時間が掛かります。
特に何台かまとめてこれだけの数の鉋を調整するとなると、ホントにかなりの手間と時間が掛かります。

でも、私を含めて職人は、鉋の調整に時間が掛かったとか、手間を食ったとかは、あまり口にはしません。
職人にとって、時間や、手間がかかると言うのは、腕が悪いと自分で言っているようで、カッコ悪くて恥ずかしからです。

職人は、きちんと、きっちりと、正確に、それでいて、早く出来てこそ、腕がよくて、お金がもらえるのです。
ですから、職人の「朝飯前のひと仕事」は、実は、暗いうちからであったりします。

おそらく大抵の職人は、ホントは、仕事で、四苦八苦し、予想以上に手間取る時が、案外多いのではないかと思います。
そんな時に限って、職人は、素知らぬ顔でトボケているものです。
特に、お客様の前では「大したことないです。」とか「それほどでもなかったですよ。」とか言って、適当にカッコをつけて、取り繕ってしまうことが多いものです。

ただ、お客様の方で、なんとなく察してしまわれるといいますか、お察し下されることも、私共、職人が考える以上に多いように思います。
職人は、単純で困ります。

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